重い毛布(ウェイト・ブランケット)を使うと鎮静&集中、睡眠改善効果がある理由
前回はウェイト・ブランケットがどんな作りか、使用感についてご紹介しました。
こちらは私が使っているサンプルの写真です。肌触りの良い起毛のカバーがついています。
カバーの中身は↓こんな感じ。これもまだサンプル段階ですが。
13-15cm感覚で仕切られ、薄いコットンとガラスビーズが
入っています。
医師の長沼睦雄先生や工場と打ち合わせしながら、この仕切り方
やビーズの入れ方についても工夫をしているところです。
ビーズが均等に縫い込まれたブランケットで身体に均等に圧がかかると
セロトニンやメラトニン、オキシトシンなどが分泌しやすくなると
言われています。
今回はウェイト・ブランケットを使うとどうして鎮静や集中、睡眠改善効果があるのかを
詳しくご紹介します。
ウェイト・ブランケットは元々自閉症の方用に開発されたグッズ
元々ウェイト・ブランケットは自閉症の子供たちのために開発されました。
これはテンプル・グランディンが発明したHug Machine(ハグ・マシーン)
から構想を得て作られたとされています。
彼女は自閉症ながら動物学者、非虐待的な家畜施設の設計者として成功をおさめ、自閉症啓発のために本を出版し、講演活動も行っていらっしゃいます。
テンプル・グランディンは著書で、自身の重い不安感や感覚過敏について語り、
深く身体に圧力をかけることで不安感が和らぐと発見しました。
子ども時代、テンプルは強い圧力を求めてソファーのクッションの間に手を入れたり、ブランケットで身体をぎゅっと巻いたりしていたそうです。
親族の農場で牛が体を固定する締め付け機に挟まれると落ち着く様子を見て、
圧迫刺激に鎮静作用があるのではないかと思いつき、
人間の過敏な神経を落ち着かせるのにも効果があるのではないかと、
自分用の「締め付け機」(ハグ・マシーン)を開発しました。
「自閉症の子供たちへの圧迫刺激の行動的、生理学的効果:グランディンのハグ・マシーンの効果を評価する試験的調査」という論文では以下のように報告されています。
マシーンを使って圧迫刺激を得られた子供は緊張レベルが下がり、特に不安感が顕著に減った。圧迫刺激は自閉症の人、特に過覚醒や不安感に悩む人を落ち着かせる効果があると考えられる。
効果の秘訣は圧迫刺激(Deep Pressure Stimulation)
ウェイト・ブランケットはその重さで全身に「圧迫刺激」をもたらすのが特徴なのですが、
「圧迫刺激」という言葉から想像するとリラックスできるどころか、
ストレスになりそうですよね(笑)
この圧迫刺激についてご説明します。
圧迫刺激は英語で‛Deep Pressure Stimulation (DPS)’と呼ばれています。直訳すると「深い圧力の刺激」です。
圧迫刺激とはぎゅっと優しく抱きしめたり、ハグをしたり、なでたり、
締め付けたりすることでもたらされる触感覚入力で、
身体全体の固有受容感覚に必要な刺激を与えることができます。
これが神経系をリラックスさせます。
圧迫刺激によって副交感神経を優位にし、交感神経の働きを抑える効果があります。
副交感神経にスイッチを切り替えることで、
「fight or flight(闘うか逃げろ)」という状態から、
「rest and digest (休んで消化する)」状態に切り替えることができます。
交感神経は「興奮・警戒モード」、車でいうとアクセルです。
仕事の締め切り前や、人前でスピーチをする、予想外に多い請求書が届いた時、
ひどい天候で見通しの悪い中の運転時など
ストレスの多い状況に対応するときに活性化する神経です。
副交感神経は「沈静、リラックスモード」、車でいうとブレーキでしょうか。
副交感神経が優位になると、緊張がゆるみ、呼吸や心拍数がゆったりとし、血流もよくなり、消化や免疫機能が働きやすくなります。
健康な人は交感神経と副交感神経のバランスをうまくとっています。
必要な時に交感神経が優位になることは問題ないのですが、あまりに長い間交感神経優位の状態が続くと、不安感やイライラ、疲労感につながってきます。
睡眠が浅くなり、消化システムにも問題が出てきます。
交感神経が優位のほうが集中できそうに思えますが、緊急事態でないかぎり、
副交感神経とのバランスがとれているほうが長時間集中しやすくなります。
一見相反するようだが、例えば極度に緊張すると本来の力を発揮できないように、集中力というのはリラックスした状態で最も発揮される(横越教授) (日経ウーマンオンライン:集中力UPや快眠にも 副交感神経を高める6つの食品)
自閉症スペクトラム、ADHD、不安障害、認知症、PTSD、感覚統合障害の方は交感神経が優位の状態になりやすく、長時間を交感神経優位で過ごします。
落ち着いてもちょっとしたことがきっかけで興奮状態になりやすいのです。
ウェイト・ブランケットで圧迫刺激を身体に与えることで、副交感神経に切り替えやすくします。
自律神経のバランスが取れることでリラックスし、感情や思考のコントロール力が高まります。
また幸せホルモンと呼ばれるオキシトシンやドーパミン、エンドルフィン、リラックスホルモンのセロトニンがバランスよく分泌されるようになります。
セロトニンが夜睡眠ホルモンであるメラトニンに変換され、夜は良く眠れるようになります。
ホルモンのバランスの良い分泌で感覚情報(刺激)を身体&脳がうまく制御できるようになります。ストレスレベルが低下し、ストレスホルモンであるコルチゾールの分泌も低下します。
ウェイト・ブランケットの圧迫刺激で得られる効果
ウェイト・ブランケットによる圧迫刺激で、次のような効果が得られると言われています。
- 落ち着き
- 不安感の緩和
- 幸福感の増幅
- 社交性の向上
- コミュニケーション力の改善
- 睡眠の改善
- 集中力の向上
- 発作やパニックの回数や程度を減らす
- 固有感覚処理能力の向上とバランス
- 身体/空間認知力の向上
- 協調運動能力の向上
- 感覚過敏の緩和
- ストレスのある環境への耐性の強化
- 自傷の低減
圧迫刺激はどんな症状を緩和するの?
ウェイト・ブランケットなどによる圧迫刺激によって副交感神経にスイッチが入りやすくなり、落ち着いたり、安心感が増し、感情や思考、感覚処理などを自身でうまく制御しやすくなります。
ADHD、自閉症スペクトラム障害、精神障害(気分障害、うつ、不安障害、認知症、PTSDなど)、感覚統合障害
といった障害の方に効果があると言われています。
そして、このような障害をお持ちでなくとも、誰でも圧迫刺激の恩恵は受けられると考えられています。だからこそウェイト・ブランケット(Weighted blanket)が欧米で一般の方にも人気なのでしょう。
上記圧迫刺激については
What is Deep Pressure Stimulation?(Applied Behaior Analysis Edu.orgのサイト)
The Ultimate Guide to Deep Pressure Therapy (Harkla)
を参照しています。
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